セルサーガ、第2話
なーんもやることねーなー。
俺が今乗ってるのは銀河鉄道のローカル線だ、各駅に止まるとはいえ通常の電車とはわけが違う、駅の間隔は当然人が住める環境の惑星間とゆうことになるので最初の星に着くまで1週間もかかるのだ。
それでもかなり速いのだが。
はぁ、マジ卍。
ただでさえやる事もなく退屈な時間、他の乗客の家族連れなんかは子供たちが窓の外星の側を通るたびキャッキャキャッキャ騒いでやがる。
俺は大人だ、いちいちそんな事ではしゃいだりなんかしないし基本テンションも低い。
何がそんなに楽しいのかねーと思いながらその光景を眺めていると、目の前に座っている相席の男が俺の方を一瞥してこう呟いた。
坊やだからさ、、、
!!?
何だこいつ?と思っていると
今私のことを何だこいつ?と思っただろう?ククク、何もそんなに怯える事はない、ただの読心術さ。
あなたがあの子供を見て何が楽しいんだろうねと思ってたからね、坊やだからさと教えてあげたのさ。
ど、読心術だと、、、!?何だこいつ、一体何が目的だ?まさか、あの組織の追っ手じゃねーだろうな、、、
俺の焦りを感じ取ったのか、その男は優しく微笑んで俺に語りかけてきた。
そう、その表情はまるで、この世のすべてを見透かしたような、優しいはずなのにどこか冷たさを帯びた、そんな感じだった。
夏だってのに寒気がしやがる。
ハハハ、だから怯える事はないと言ったろう?
私は敵じゃないよ、ただの旅行者さ。
自己紹介をしよう、私は間久部マリオ、人は私の事を"まさに彗星のマー"と呼ぶがね。
何だと、今目の前にいるこの男があの、まさに彗星のマーだってゆうのか!?
まさに彗星のマー、それは恐らく日本人なら知らない人はいないと言っても過言ではない超有名人だ。
何故この男がまさに彗星のマーと呼ばれているのか、それは20年前に起きたある事件がきっかけとなっている。
地球に72年周期で接近するハレー彗星、それが20年前の時はかなり地球に近い位置まで接近するとニュースになっていた。
とは言っても当時の専門家たちの間でも、それでも彗星が地球の重力圏に引っかかって地球に落ちる心配はない、それどころか肉眼でもはっきりと見えるし綺麗ですよ。
と言われていたのだが、日本の邪馬台村に住む1人の子供が異論を唱えたのだ。
「彗星が、彗星が地球に落ちる、、、マー!マー!マー!」
その子供は卑弥呼の一族の末裔で神託を受けていると言われていた。
予言の一族とも呼ばれており、代々不思議な能力を持った子供が生まれてきて、その時彗星が地球に落ちてくると言っていた子供も予言の能力を持っているとされていた。
その子の能力は、災いが迫ってくると、マー!マー!マー!と叫んで災いを報せるとゆうものだったのだ。
来る日も来る日もマー!マー!マー!と叫んで走り回る予言の子供を見て村人たちは震え上がった。
一刻も早く対策をとるべきだと防衛省に電話を入れまくった。
当時村の間では防衛省に電話を入れるバイトを村長が雇いだすくらいこの問題に対して真剣に取り組んでいたのだ。
そしてこれがやがてメディアにも大きく取り扱われるようになり、防衛省も彗星接近時の迎撃態勢を取れるよう動いていったのだ。
だが、結局彗星が落ちることはなかった。
予言の子供は一転して、日本一の大ホラ吹き野郎だと世界中からバッシングを受ける事となった。
その時村に住んでいた子供の1人が予言の子に対して
「彗星が落ちてくるとか言うけどさー、マー!マー!とか叫んで村中走り回っちゃって、お前こそまさに彗星のマーじゃん」
と言っているのがニュースで流れたのだ。
それを見た日本中の人間がその日よりその予言の子供のことを、まさに彗星のマーと呼ぶようになったのだった。
あれから20年、そうか、あん時のガキがこんなにでかくなりやがったか、、、
どうやら君も私の事を知っているようだね、無理もない、あれは日本中を巻き込んだ事件だったからね。
あれ以来私は家族にも捨てられ村を追い出され、行き着いたスラムですらも相手にされない、それはもう思い出すだけでも死にたくなるような暮らしだったよ。
私とまともに接してくれる人間は誰一人としていなかった、そんな孤独な日々を送っているうちにいつの間にやら人の心の声が聞こえるようになってきてね、今では私の円の範囲に入った者の思考は手に取るようにわかるのだよ。
もっとも、範囲はたかだか4メートルだがね。
円?こいつ、円を知っている、、、!?
そう、私も念能力者だよ、君と同じね。
つづく